久保 尭之(くぼ たかゆき) 鹿児島県出身。もともとは東京でエンジニアとして働いていたが、東日本大震災後の復興支援活動を経て、2016年の熊本地震を機に南阿蘇へ移住。復興イベントの企画や一次産業の支援に携わったのち、2019年に旧来型の観光協会から現在のDMO体制への移行を牽引した。現在は「みなみあそ観光局」の常勤理事(CFO)として、レンタサイクルや体験型コンテンツの開発、阿蘇広域の情報発信など、観光地域づくりの全体を支えている。熊本地震震災ミュージアムKIOKUの統括ディレクターも務める。 Q. 南阿蘇に移住された経緯と、観光局に関わるようになった理由を教えてください。 A. もともとは東京でエンジニアとして働いていました。東日本大震災後の復興支援活動を経て、2016年の熊本地震を機に南阿蘇へ移住しました。当初は復興イベントの企画や一次産業の支援を行っていましたが、阿蘇地域の創造的復興や、地域の持続可能性を高めるためには、観光産業の再興が最重要課題だと考えるようになりました。そのためには強固な組織的推進体制が必要だと感じ、2019年に旧来型の観光協会(当時:事務局長)から現在のDMO体制への移行を牽引、実効性のある体制づくりを進めてきました。 Q. みなみあそ観光局は、どのような組織ですか? A. 南阿蘇村の観光産業を基幹産業と位置づけ、自ら外貨を稼ぎ、地域に再投資する「稼ぐ観光」を実現するための地域経営組織(DMO)です。DMOとは、観光地域づくりを担う法人のことです。行政とうまく連携しながら、行政ではできない、より実務に近い専門性を持った組織として、そしてその担い手として活動していくことをイメージしています。 「アクティビティセンター南阿蘇」でのレンタサイクル事業の運営、南阿蘇ならではの体験型コンテンツの開発、災害伝承施設の運営、阿蘇広域の自治体と連携した情報発信など、多角的に観光地域づくりを進めています。 南阿蘇村は、熊本地震やコロナ禍で苦労した時期を経て、今はホテルや旅館が増えるなど、事業者の皆さんが地域の可能性を感じてくださっている、急成長のフェーズにあります。だからこそ観光局でも、体験コンテンツをもっと増やす、情報発信を強化するといった、新しいことを始めようとしています。あわせて、法人としての体制も、しっかりと確立していく時期です。 Q. 地域コーディネーター(地域おこし協力隊)は、どのような仕事・働き方ですか? A. 観光局では、地域おこし協力隊を「地域コーディネーター」として迎えています。民間に近いところで、現実的な知識や現場で役立つスキルを身につけながら、独りよがりにならないよう、地域全体を俯瞰する視点も学べる仕組みだと考えています。特徴は、「地域の現場での実務力の向上」「南阿蘇エリアでの人脈形成」「起業への積極的な支援」の3つです。最長3年の任期のなかで、地域の事業者や行政の方々と関わりながら、観光の現場を担っていきます。 1年目は、まず南阿蘇の観光情報に精通することを大切にしています。パンフレットをつくったり、情報発信をしたりしながら、観光案内ができるくらいに、南阿蘇をしっかり見て回ってもらいます。そのうえで、ご自身の興味や強みと重なる分野で、体験コンテンツの企画や情報発信などを担当していただきたいと考えています。 協力隊の間は、副業も可能です。ご自身のやりたい事業をスモールスタートしてもよいですし、まずはアルバイトとして宿などで修行をする、という形でも構いません。ただ、どっちつかずになってしまうのはよくないので、相談しながら調整していきます。 Q. 移住者として、地域に入るときに大切だと感じていることは何ですか? A. 私自身は、2016年に熊本地震の復興支援をきっかけに、南阿蘇へ来ました。もう10年ほど前のことです。鹿児島出身で、阿蘇が有名な場所だということも知っていましたが、南阿蘇でどんな人が、どんな思いで動き、暮らし、事業を営んでいるのかについては、正直なところ、解像度がとても低かったと思います。 当時は私も若く、地域の方々に本当に可愛がっていただきました。その中で、少しずつ地域の解像度が高まり、大きな意味では、皆さんが同じ方向性や思いを持った仲間なのだと感じられるようになりました。今の自分があるのは、その時間のおかげだと思っています。 外から来た人は、「やりたいこと」を持っているほど、独りよがりになりやすい面があると感じています。だからこそ、まずは地域の中に入り、現場で実務を担いながら、地域の方々や事業者、行政と関わるなかで、地域全体を見渡す視点を育てていくことが大切です。 お店を始めることは、目標ではなく、通過点だと思っています。ゴールは、事業を続けていくこと、そして南阿蘇で暮らし続けられるようになることです。地域の方々との関係がよければ、自分も居心地よく事業ができ、楽しく暮らし続けられます。協力隊の3年間は、そうした状態に向けた助走期間になると思っています。まさに南阿蘇で暮らし続けるための「パスポート」のようなものです。 Q. これまで、協力隊を卒業した人たちは、どのような道に進んでいますか? A. 宿を始めた人、フリーランスの動画クリエイターになった人、自転車やツアーのお店を開いた人がいます。飲食店を始めようと、今まさに準備を進めている人もいます。任期を終えたあと、そのまま観光局に就職し、施設の店長として企画や運営を担っている職員もいます。 多くの卒業生を見てきて、共通していると感じるのは、地域の事業者の方々との接点の多さです。観光局の仕事は、地域の事業者の方々と関わる場面がとても多く、その中で、南阿蘇ならではの事業の難しさや面白さを、たくさん学ばせてもらいます。その学びの先に、お店を開く、独立するといった道が生まれているのだと思います。 卒業した人たちとは、今も付き合いが続いています。たまに一緒にプロジェクトをすることもあります。卒業後もOBとして継続した関係性があり、観光局にとっても、大きな助けになっています。 Q. どのような方に、仲間になってほしいですか? A. 特別なITスキルや観光の専門知識が、最初からなくても構いません。南阿蘇には、まだまだビジネスチャンスとなる「余白」がたくさんあります。観光局での業務を通じて、地域住民や事業者の方々との信頼関係を築きながら、南阿蘇のリアルな課題と資源を把握してください。「飲食」「土産」「宿」「体験」など、ご自身の関心が高い分野で自分の仕事を探す時間として、この環境を使い倒してくれる、起業家精神を持った方をお待ちしています。すぐに起業を考えている必要はありません。南阿蘇に入る入り口として、あるいはスキルを磨く修行のフェーズとして、協力隊の3年間を活用していただくことも、大歓迎です。 Q. 最後に、これから南阿蘇に関わりたい方へメッセージをお願いします。 A. 南阿蘇には、大自然の恩恵を受けながら、新しいことに挑戦する人を温かく受け入れる風土があります。いきなり大きなリスクを取る必要はありません。みなみあそ観光局のネットワークと支援を得ながら、ご自身のビジネスや理想のライフスタイルを形にしていきませんか。移住、Uターン、Iターンなど、どのような背景の方も歓迎します。今後の募集や関わり方については、採用情報ページのエントリーフォームからお気軽にお問い合わせください。任期を終えたあとも、仲間として関係が続くのが、この環境の良さだと思っています。一緒に南阿蘇の未来をつくる仲間にお会いできるのを楽しみにしています。