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金曜の夜市が育てた「関係資本」 ― 南阿蘇村ナイトマーケット

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南阿蘇村ナイトマーケットは、村の子ども議会で、当時の中学生から出た「村民の憩いの場がほしい」という提案から始まりました。2026年8月28日から10月23日まで、隔週の金曜の夜に、道の駅あそ望の郷くぎのの駐車場で全5回を開き、延べ約2,550名の方に足を運んでいただきました。
みなみあそ観光局は、この夜市を、観光客を呼び込むためのイベントとしてだけでは捉えていません。村に暮らす人が、金曜の夜にふらりと出かけて、知っている顔に会える場所。その「居場所」を、村の日常の中につくることが出発点でした。
始まる直前の7月28日には、令和8年熊本地震が起きています。復旧のさなかに、なぜ夜市なのか。そう問われることもあるかもしれません。ただ、被災した地域にこそ、人が集まって顔を合わせ、笑える場が要るのではないか。それが、この夜市に込めた一つの想いです。

南阿蘇村は、これまでも大きな災害を経験してきた地域です。災害のあとに地域を立て直す力は、施設や予算だけで決まるものではないと、観光局は感じています。
誰に連絡すれば動いてもらえるのか。誰が何を持っているのか。互いに顔が分かっているのか。こうした人と人、組織と組織のあいだの信頼や関係を、ここでは「関係資本」と呼びたいと思います。道路や建物のように目に見えず、数字にもなりにくいのですが、いざというときに人が動けるかどうかを左右する、地域の見えない資産です。
そしてこの資産は、災害が起きてから急に作れるものではありません。平時に、顔を合わせ、言葉を交わし、一緒に何かをやってみた経験が、非常時の動きの速さになります。だからこそ、関係は「備えとして築く」のではなく、「楽しい場で日常的に積み上げていく」ほうが続くのではないか。夜市の背景には、そうした考えがあります。

南阿蘇村は、熊本県キッチンカー協会と、2024年4月10日に災害時の炊き出し支援に関する災害協定を結んでいます。災害時に温かい食事を届けていただく、心強い協定です。
ただ、協定は結んだだけでは、紙のままです。いざというとき、誰が連絡を取り、どこに車を入れ、どんな順番で並べるのか。それは、一度でも一緒に動いたことがあるかどうかで、まったく違ってきます。
ナイトマーケットでは、このキッチンカー協会の皆さんに、毎回10台ほど出店していただきました。南阿蘇へはどんなルートで行けるのか、道の駅の駐車場に車をどう並べるか、電源や動線をどうするか、雨の日にどうするか。そのたびに、主催側と出店者が顔を合わせて相談します。寒くなってからは、温かい汁物が欲しいといった話も出ました。それは、そのまま災害時の炊き出しで考えることと重なります。
夜市は、協定を「動かし続ける」場になっています。非常時のための訓練を、あえて訓練の顔をせず、平時の賑わいの中で重ねていく。観光局は、これも防災の一つの形だと考えています。

もう一つの関係資本は、村民同士のつながりです。地震やコロナなどによる暮らしの変化の中で、顔を合わせる機会が減ったと感じている方もいらっしゃるかもしれません。また、移住者が多いのも南阿蘇村の特徴です。
夜市の会場では、子ども連れの親子、ご夫婦、お年寄りなど、さまざまな世代が同じ場所で過ごしていました。ステージの前で立ち止まり、キッチンカーの列に並びながら、自然に立ち話が始まります。特別なことをしなくても、同じ空間に居合わせること自体に、意味があるのだと思います。
この場は、行政と観光局だけでつくったものではありません。商工会は出店し、ルナ天文台は星空の話を届け、道の駅は場を貸してくださいました。村内外の演者や司会の方、地元の大学生、そして来てくださった村民の皆さん。それぞれが少しずつ役を持って関わることで、「自分たちの夜市」という感覚が育っていったように感じています。
象徴的だったのは、子ども議会で夜市を提案した本人が、高校生になって、ステージに立ったことです。自分の言葉が、村の大人たちに受け止められ、実際の場になる。その経験は、本人にとっても、見ていた子どもたちにとっても、村づくりに関わる入口になるのではないでしょうか。若い世代の声が、政策の場から現実の場に降りてくる。そうした循環も、関係資本の一つだと考えています。



夜市では、子どもたちが手作りした募金箱を置き、熊本地震の復興支援募金を呼びかけました。なお、募金箱は地元の学童の子供たちが夏休みを活用して作ってくれました。
毎回のプログラムには、南阿蘇村がSDGs未来都市宣言をしていることを受けて、マイカップを掲げて乾杯する時間も組み込みました。キッチンカーのみなさまにも、マイカップ割にご協力をいただきました。子ども向けには、南阿蘇村や環境・防災のことを自然と学べるクイズラリーも毎回実施しました。
支援や環境への取組は、ともすると「やらなければならないこと」になりがちです。けれども、楽しい場の中に自然に混ぜておけば、肩肘張らずに参加できます。賑わいと、ささやかな支え合いが同じ場所にあること。それも、この夜市が大切にしたかったことです。

5回の開催を通じて、課題も見えました。雨の日の過ごし方、夜の冷え込み、大人や中高生が楽しめる企画。そして、隔週という間隔は、運営する側にも、来る側にも、少し速かったという声がありました。
来年度は、回数を絞り、一回ごとの準備と関係づくりに時間をかけるほうがよいのではないかと考えています。関係資本は、イベントの数ではなく、一回ごとの出会いの質で育つものだと感じるからです。
夜市は、子ども議会の提案、復興支援、SDGs、防災協定の実践と、いくつもの役割を重ねた場です。単なる飲食イベントにせず、その重なりを大切にしながら、無理のない形で続けていきたいと考えています。
みなみあそ観光局は、村民、事業者、行政、協力団体の皆さんと一緒に、この場を育てていきます。イベントと防災、地域づくりをつなぐ取組にご関心のある自治体・団体の皆さんは、視察・研修のご案内をご覧ください。出店や連携のご相談は、お問い合わせからお寄せください。